清水エスパルスシンクタンク

清水エスパルスの試合内容以外の部分、会社の姿勢や選手監督スタッフの評価などを文化人類学的なアプローチで語る。

2018年09月

ボールを保持することが良いことで、ボールを放り込む(手放す)ことが悪いこと、と考える派閥がこの世に存在する。

ジョゼップ・グアルディオラ監督率いるFCバルセロナが強くて魅力的なサッカーをしていたことにより、一種の信仰や伝染病のように世界的に亜種が増えていたのは約10年前のこと。

しかし、今年開催されたロシアワールドカップの結果を考えれば、世界的な潮流はそこに無いと思うが、極東の島国では未だに↑のような考えを主張する人が多い。

特にボールを保持することにかけて一時代を築いたFCバルセロナやスペイン代表は、その界隈(ボールを保持することにかけて)では世界一だと思って間違いない。

ただし、そこに至るまでの過程は数年ではなく数十年の長い時間が必要で、ピッチに立つ11人全員のボールを扱う技術を高め、仲間同士の連携(イメージの共有)を絶え間ない練習で落とし込み、バックパスや消極的なパス回しを恐れない強い精神を鍛え、尚且つボールを保持することをサポーターやクラブ等が(結果が残せない時でも)全面的に後押しすることで初めて完成する伝統工芸のガラス細工のようなモノです。

 

つまり、ボールを保持することに特化するということは、チームを作るのも結果を残すのも大変だということです。

分かりやすく例えると、ジャンケンで「チョキ」は使わないと相手に宣言し、「グー」と「パー」だけで勝つような危険な橋を毎回渡るようなチーム作りをするということです。

ちょっと話が逸れますが、森保さんや鬼木さんが前任者の強烈な攻撃的サッカーに守備の決まりごとを浸透させてリーグ優勝に導いたことからも、「グー」「チョキ」「パー」の使い分けが大切だと解ってもらえると思う。

 

サッカーは、相手ゴールを奪うことで勝敗を決めるスポーツであり、その過程を競うスポーツではない。
「ゴールを奪う」という現実から目を背けた人ほど、「良いサッカー」を主張する傾向にある。

また、「悪いサッカー」と言われる放り込みについても、ダイナミックに局面を打開する興奮はとても魅力的だと思うのですが、日本人の体格ではちょっと魅力が伝わりにくいのかなと思ったりします。

 

まとまりのない文章になってしまいましたが、サッカーの面白さをボールを保持することと結び付けることは、サッカーというスポーツの価値を矮小化することに他ならないと私は考えます。

 

勝敗は兵家の常なので、結果に対しては何も言うことはありません。

しかし、興行としてはクラブ初の取り組みなので、私の感想も含めて評価したいと考えます。

 

まず、興行としては大成功と言って差し支えなく、平日ナイターで14,790人もの集客を成し遂げた営業力は素晴らしいの一言でした。

しかし、運営面では日本平スタジアムへのアクセス問題を露呈した形となり、帰宅ラッシュに完全に巻き込まれたことで選手も含め不快な思いをした来場者は多かったかと考えます。

※帰りにバスは意外とスムーズだったので、それなりに対策をしていたと思います。

 

次に、来場者プレゼントで配布された黒いユニフォームですが、全体に静岡市の花(タチアオイ)を散らし胸に「S」と刻まれた意匠のモノで、個人的には(タチアオイは夏の花)季節外れだし巨人軍のユニフォームっぽいなという印象でした。

しかし、入場時に真っ黒になったスタジアムにオレンジボードを掲げるとスタジアム全体がオレンジと黒に染まり、とてもカッコ良かったです。

 

応援のスタイルとして、清水は楽器を駆使したサンバのリズムを伝統としています。

しかし、21時以降鳴り物を禁止したことで、クラップと声援のみという普段とは全く違うスタジアムの雰囲気でした。

対戦相手のガンバ大阪は、ホームで鳴り物禁止に慣れているためか、とてもスムーズに応援を移行できて感心しました。

 

クラブ史上初めての金曜日夜開催は、魅力あるプレゼントと営業力があれば土曜日開催に匹敵する動員を期待できると証明したことが唯一の成果だったのかなと考えます。

まあ、ダゾーンかJリーグから多額の補助金があったことは想像に難くないですが、どちらにしても実績はあった方が良いに決まっています。

来期以降の金曜日開催に期待します。

 

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9/21(金)ガンバ大阪戦『フライデーナイトJリーグ』のお知らせ
https://www.s-pulse.co.jp/news/detail/40879/

今年からダゾーンの強い要請によりJリーグが取り組む金曜夜の特別な興行に、明日清水エスパルスも初参戦することになります。
無料限定ユニフォームを15,000名へプレゼント。
試合開始時間を19時30分に遅らせる。
4000人以上の方にプレゼントを大盤振る舞い。
苗字名前に「金」のつく人無料招待等様々なイベントが企画されています。

個人的には、アメフトのマンデーナイト的な取り組みはやった方が良いと考えていたので、好意的に受け止めています。
ただ、Jリーグで上手く行くかどうかは、明日の来場者数次第だと考えます。
平日夜でも10,000人は集められると証明しないと来年以降の開催は難しいでしょう。

併せて、下位に低迷するガンバ大阪を叩き、今年のJ1残留をほぼ確定させるためにも、ぜひ頑張って欲しいです。





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